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3Dプリント義歯(デジタルデンチャー)とは?最新技術と現場が抱えるリアルな課題

  • 執筆者の写真: 大阪院 Ihana総合歯科
    大阪院 Ihana総合歯科
  • 2025年12月30日
  • 読了時間: 7分

2024年12月から、保険診療で新しく「3Dプリント義歯(デジタルデンチャー)」が作れるようになりました。

義歯とは”入れ歯”の事です。義手や義足のように、歯科業界では義歯と呼ばれます。

従来の義歯は、歯科技工士が多くの工程を手作業で行う、非常に丁寧で職人的な世界でした。しかし、技工士の高齢化や人材不足が全国的に問題となり、“これからの時代、義歯を安定して作り続けられるのか” という不安が現実味を帯びてきています。


こうした背景から、再現性が高く、効率的に義歯を作ることができるデジタル技術が注目され、保険診療にも導入されました。3Dプリント義歯はまさにその象徴で、従来の入れ歯とは違う「新しい選択肢」として広がりつつあります。


YouTubeにも3Dプリント義歯をテーマに、入れ歯専門医の歯科医師と歯科技工所の経営者が集まり、対談した動画をアップロードしてます。是非こちらもチェックしてみてください!

3Dプリント入れ歯保険適応について歯科医師×歯科技工士で話をしたらすごい本音が出てきた【YouTube】

1. なぜ3Dプリント義歯が必要とされているのか



義歯づくりの裏側には、一般の方には見えない苦労がたくさんあります。

精密な型取りに始まり、噛み合わせを採る作業、人工歯の細かな配列、樹脂を固める工程、最後の研磨まで、数十にも及ぶ工程をすべて手作業で行うため、技工士の負担は非常に大きいものです。


今はまだ技術者が支えていますが、若い技工士が少なく、義歯を専門に扱う技工所は減る一方です。このままでは、高齢者の多い日本で義歯を必要とする方が増えるにもかかわらず、製作を担える人材は減っていくという、矛盾した状況になってしまいます。


そんな問題を解決するひとつの方法として、「義歯製作を一部デジタル化する」という流れが生まれました。3Dプリント義歯は、その中心にある技術です。




2. デジタル義歯の特徴



― “同じ入れ歯をもう一度作れる”という安心


3Dプリント義歯が従来の義歯と大きく違うのは、義歯の形状がデジタルデータとして保存されるという点です。これにより、一度作った義歯を紛失してしまった場合でも、同じ形をそのまま再現することができます。


従来の義歯は、同じ技工士が作っても微妙な違いが出てしまい、まったく同じものを再現することは不可能でした。

しかしデジタル義歯なら、“コピー”に近い義歯を再び作ることができるため、義歯をなくしやすい方や、破損の心配がある方には大きな安心につながります。


これは特に、認知症の方や施設入所中の方など、義歯トラブルが起こりやすい方にとって非常に大きなメリットです。

ただ「使い心地が良い義歯」が手元にあることが、前提としてあります。使い心地の悪い義歯をコピーしても、使い心地の悪い義歯が出来るだけですので、コピーするもとのデンチャーが使い心地の良い満足するものである必要があります。




3. 研究からわかる3Dプリント義歯の実力



最近の研究では、3Dプリント義歯の“フィット感”が高い可能性が示唆されています。フィット感を専門的に定義することは難しいですが、専門用語の”維持力”をフィット感としています。

従来の義歯は樹脂を固める際に少し縮む特徴がありますが、3Dプリント義歯にはこの縮みが少ないとされています。3Dプリントデンチャーとは別に、ミリングデンチャー(削り出し)もまたコンピュータの支援により義歯作製が簡便化する可能性があります。特にこのミリングデンチャーは縮む性質はほとんどありません。そのため、歯ぐきに合わせた形がそのまま再現され、吸着の良さや外れにくさにつながっていると考えられています。

とはいえ、この従来の縮む性質に対しても色々と対策をしているので、研究結果としても圧倒的に高い維持力が計測されているわけではなく、「高い可能性あるかも」くらいの結果であることは補足しておきます。


また噛みごこちに関しては研究結果が一定ではなく、「噛みやすい」と評価するものもあれば、「従来義歯のほうが自然だった」という報告もあります。これは素材の硬さや弾力性が従来のレジンと違うことが影響していると考えられています。


総合的に見ると、フィット感は良い可能性があるものの、噛みごこちに関しては人によって感じ方が変わりやすい、というのが現在の評価です。




4. 材質の違いと修理の難しさ



3Dプリント用の樹脂は、従来のものよりやや硬めで、しなりが少ない傾向があります。

そのため、割れてしまった場合に従来のレジンで補修するのが難しく、技工所では表面を削ったり、専用の接着剤を使ったりと、特別な工夫が必要です。


技工所の技術があれば修理ができないわけではありませんが、従来義歯のほうが修理がしやすいという点は否めません。

実際に修理したケースが少ないため、これからどのような評価になるかはまだ研究からも読み取れない部分で、今後経験・工夫するしかないように思います。

今後、材料が進化していくことでこの問題が改善されることが期待されています。




5. 保険診療としての課題



技術は進んでも制度が追いついていない現状


3Dプリント義歯には専用のプリンターや材料が必要で、設備コストが高いという特徴があります。しかし、現在の保険制度では従来義歯と同じ点数での取り扱いとなっており、導入する歯科医院や技工所側の負担が大きくなってしまうという課題があります。


先程説明したように、フィット感や外れやすさに明確な差がない以上、患者さんからしても3Dプリントデンチャーを選ぶメリットを感じにくく、歯科医院にとっても導入するインセンティブがないのが現状と言えるでしょう。

患者さんの費用負担が増えることはありませんが、「医院側にとっては導入しづらい」という現実があるため、普及には少し時間がかかるかもしれません。

この辺りは、技術の問題ではなく制度の課題と言えると思います。


可能性として懸念しているのは、技工所サイドの3Dプリントデンチャーの技工費の不当な値下げです。「歯科医院が技工所に適正な価格を支払っているか”問題”」は、私の知る限り50年以上も尾を引いている根深い問題ですが、ここ最近は歯科医院の”強引な値下げ”も減っているように感じており、業界としては健全化の方向に向かっていると”感じて”います。ここに来て、さらに義歯の値下げ競争が行われるのは個人的に非常に心配しています。この辺りは本当に個人的な感覚ですので読み流して頂ければと思います。



6. 3Dプリント義歯はこれから


これは動画中でも話し忘れた内容ですが、この3Dプリント義歯とは私やIhanaグループ代表の三輪先生には縁があります。私も三輪先生も大学生の頃、大阪大学歯学部の歯科理工学教室という所で少し研究に触れる機会があり、その当時注目を集めていた研究の一つが3Dプリントデンチャーでした。2009年の事だったと思います。ちょうど3Dプリントにまつわる大きな特許が切れて多くのアクセスが可能になった時期です。

そこから十数年の時を経て、保険適応にまで進歩したことは感慨深いものがありますが、3Dプリントの材料に関する順当な進歩でここまで来ましたが、同じペースの進歩だと大きく改善するのには少し時間がかかりそうです。

ただ先程お話した制度の問題も大きく3Dプリントデンチャーに多くの研究費用を割くだけのインセンティブが設定されれば、大きく進化する可能性もあると思います。その時には技工士不足という日本全体の課題を考えると、デジタル化は義歯治療を支える大きな力になるはずです。


まとめ



3Dプリント義歯は、同じ義歯を再製作できる、フィット感の向上の可能性があるなど、従来にはない安心感を提供してくれる技術です。一方で、噛みごこちの違いや修理の難しさなど、いくつかの課題もあります。


大阪市中央区にあるIhana歯科北浜では、お口の状態や生活スタイルを丁寧にお聞きし、従来義歯とデジタル義歯のどちらが適しているか、患者さんと一緒に考えながら治療をご案内しています。

「自分に向いているのはどっちだろう?」と気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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