いびき・昼間の眠気は危険信号。歯医者がサポートする睡眠時無呼吸症候群
- 大阪院 Ihana総合歯科
- 4 日前
- 読了時間: 7分
Ihana歯科北浜 歯科医師院長の岩崎です。
最近、「昼間にどうしても眠くなる…」そんなことはありませんか?
しっかり寝たつもりなのに、朝からだるい。
会議中や仕事の最中に、急に眠気が襲ってくる。
もしかすると、それは単なる“疲れ”ではなく、睡眠中の呼吸が妨げられている
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS) の可能性があります。
「え、睡眠と歯医者さんって関係あるの?」
そう思われるかもしれませんが、この疾患には歯科が治療に大きく関わる領域があるのです。
睡眠の質を左右する“呼吸の通り道”は、
お口や下あご、舌の動きと密接につながっています。
今日は、あなたの眠りをもっとラクに、もっと安全にするために、
医科と歯科が連携して取り組む
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と口腔内装置(OA)療法 について、
専門的な視点からわかりやすく解説していきます。
今回の内容はYouTubeにて動画解説もしておりますので、そちらも是非ご視聴ください!
目次
1.まずは日中の眠気を“数値化”してみましょう
まずは、あなたがどれくらい日中の眠気を感じているのか、簡単に評価できる エプワース眠気尺度(ESS) をご紹介します。
エプワース眠気尺度(ESS)とは日中の眠気を客観的に評価するために、
国際的に使用されている指標です。以下の8つのシーンで「どれくらい眠ってしまいそうか」を1項目0~3点で評価し、合計します。
座って読書中
テレビ視聴中
会議や劇場で静かに座っている時
乗客として1時間車に乗っている時
午後に横になった時
座って会話している時
昼食後に静かに座っている時
車運転中に停車した時
点数の付け方
点数 | 評価基準 |
0点 | まったく眠くならない |
1点 | たまに眠りそうになる |
2点 | しばしば眠りそうになる |
3点 | ほとんど毎回眠ってしまう |
合計点数が、
0~5点:日中の眠気は少ない
6~10点:軽度の日中の眠気
11点以上:強い眠気あり → 要注意!
眠気が強い方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高まります。
重大な事故につながる危険性もあるため、軽視できません。
とくに 11 点以上の方は、睡眠時無呼吸症候群との関連が強く、
医科での精密検査が推奨されます。
2.睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に「呼吸が止まる(無呼吸)」
または「呼吸が弱くなる(低呼吸)」状態が繰り返される疾患です。
特徴的なのは、
“寝ているはずなのに、睡眠の質が極端に落ちている”
という点です。
その結果、
・ 睡眠が何度も分断される
・血中酸素濃度が低下する
・ 自律神経が乱れる
といったことが起こり、
「寝ているはずなのに疲れが取れない」「日中に強い眠気が出る」
といった状態を引き起こします。
3.閉塞性(OSAS)と中枢性(CSAS)の違い
睡眠時無呼吸症候群は大きく2種類に分類されます。
・ OSAS(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)
気道(空気の通り道)が物理的に狭くなることで起こるタイプ
舌が喉の奥に落ち込む「舌根沈下」や、
軟口蓋・咽頭周囲の狭窄が原因になることが多い
いびきを伴うことが多く、日本人では非常に頻度の高いタイプ
→ 歯科が関わるのはこちら。
・CSAS(中枢性睡眠時無呼吸症候群)
脳の呼吸中枢からの指令がうまく出なくなることで起こるタイプ
心不全などの基礎疾患に伴うことが多い
歯科が関わるのは、このうち「OSAS」のみです。
OSASは、この疾患は気道と口腔構造が深く関わっているため、
歯科的アプローチが有効となるケースがあります。
4.OSASの主要な症状 : 放置してはいけないサイン
OSASの患者さんには、以下のような症状が多く見られます。
強いいびき
日中の過度な眠気
睡眠中の窒息感
あえぎ呼吸(呼吸が止まった後にハッと息を吸う)
不眠・中途覚醒
家族やパートナーに「呼吸が止まっている」と言われたことがある
起床時の頭痛
夜間頻尿
特に、
“窒息感・あえぎ呼吸”はOSASを強く示唆する症状
とされ、臨床的にも重要な指標です。
⚠ POINT
いびきは「うるさいだけ」、「眠いのは歳のせい」と片づけてしまうと、
背景にある重大な疾患を見逃してしまう可能性があります。
5.どれくらいの人が睡眠時無呼吸症候群なのか?
日本では、
成人男性の約3~7%
成人女性の約2~5%
が睡眠時無呼吸症候群と推定されています。
数字だけ見ると少なく感じるかもしれませんが、
人口全体で考えると決して珍しい病気ではなく「身近に必ずいるレベル」の頻度です。
6.治療の流れ|医科の診断→歯科でのOA治療へ
睡眠時無呼吸症候群の診断は必ず 医科で行われます。
そのうえで治療は以下のように選択されます。
・ CPAP(持続陽圧換気)療法
中等度〜重度(AHI20以上) の第一選択とされる標準治療。
鼻にマスク型の装置をつけ、気道に一定の圧力で空気を送り込み呼吸を保ち、気道が物理的に閉じてしまうのを防ぎます。
効果は非常に高いですが、「装着感がつらい」、「ホースや機械が気になる」などの理由で、継続が難しい方も一定数いらっしゃいます。
・ OA(口腔内装置)療法
歯科で作製するマウスピース型の装置を使う治療で、軽症例、またはCPAPが使えない・続かない方 に適応。
就寝時に装着し、下顎を前方位で維持することで気道を確保します。
歯科は、医科での診断結果と治療方針を踏まえて、
その中の一つの選択肢として 口腔内装置(OA)療法 を担当します。
7.OA(口腔内装置)療法の仕組み
OA療法は、上下の歯に装着する専用のマウスピースで
下顎を前方へ誘導・固定 することで、睡眠中の気道を確保する治療法です。
どうして下あごを前に出すと呼吸が改善するの?
下顎が前へ出ると、それに連動して舌も前へ移動するため、
就寝時に舌が喉の奥へ落ち込む「舌根沈下」を防ぎます。
仕組み
1. 下顎を前方へ移動させる
2. それに伴い、舌も前方に引き出される
3. 舌根が喉の奥へ落ち込むのを防ぐ
4. 上気道が広がり、空気の通りが良くなる
このようなメカニズムにより、
睡眠中の無呼吸・低呼吸の回数を減らすことが期待できます。
✅ こんな方に検討されることが多いです
・軽症〜中等症のOSASの方
・CPAP治療がどうしても継続できなかった方
・出張・旅行などでCPAP機器の携帯が難しい方のサブオプションとして作成される方
8.“どれくらい前に出すのが正解?”
どれくらい下顎を前に出すべきか?顎位の評価
「たくさん前に出せば、その分よく効くのでは?」
と思われがちですが、実際はそう単純ではありません。
下顎を前方に出しすぎると、
・顎関節への負担増大
・噛み合わせ(咬合)の変化
・顎周囲の筋肉の緊張や痛み(筋疲労)
といった 副作用が出るリスク があります。
そのため、当院では
「効果が期待できる範囲」と「顎や噛み合わせへの負担が少ない範囲」
でバランスを大切にして顎位(下顎の位置)を決めていきます。
・ 内視鏡による気道評価
必要に応じて、鼻から細い内視鏡を入れ、
下顎を前方移動させた際に、喉のどの部位がどの程度広がるかを実際に観察することがあります。
このように、実際の気道の変化を確認しながら顎位を決めることで、
できるだけ負担を抑えつつ、治療効果を高めることを目指します。
9.まとめ:歯科ができる睡眠サポート
睡眠時無呼吸症候群、特にOSASは、
「いびきがうるさい」や「少し眠い」だけで済まされない、
全身の健康と生活の質に大きく関わる疾患です。
その中で、
歯科が行う口腔内装置(OA)療法は、医科と連携した重要な治療選択肢 の一つです。
・いびきを指摘されることが多い
・日中の眠気が強く、仕事や運転に支障が出ている
・家族に「寝ているとき、呼吸が止まっている」と言われた
・朝起きてもスッキリせず、頭痛やだるさが続く
こういったサインに心当たりがある方は、
一人で悩まずに、まずは相談してみてください。
大阪市中央区にあります当院Ihana歯科北浜ではあなたの睡眠の質を高めるお手伝いができればと考えています。特に同ビル3階の内科さんと強く連携しているので、睡眠検査→診断→マウスピース治療→経過観察・評価の流れがとてもスムーズに行えます。ぜひ相談だけでも気軽にご連絡ください。

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