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スポーツドリンクでむし歯になる?〜スポーツする人ほどむし歯が多いという現実〜

  • 執筆者の写真: 大阪院 Ihana総合歯科
    大阪院 Ihana総合歯科
  • 12月1日
  • 読了時間: 9分

更新日:6 日前



この記事では、「Ihana歯科北浜ラジオ」で話題になったテーマをもとに、スポーツドリンクとむし歯の関係、そして今日からできる予防のポイントをわかりやすく解説します。

動画もぜひチェックしてみてくださいね〜



こんにちは、Ihana歯科北浜の院長岩崎(歯科医師)です。

スポーツをするときの定番ドリンクといえば「スポーツドリンク」。

運動中や運動後に欠かせないという方も多いのではないでしょうか?

もしくは、お子さんが部活の時に飲んでいることも多いのではないかと思います。


では「スポーツドリンクはむし歯になると思いますか?」と聞くと、多くの人が「そりゃ〜むし歯のリスクにはなりそう」って答えを思い浮かべつつ、「でも、みんな飲んでるし大丈夫なんじゃない?」って思っている方も結構いらっしゃると思います。


「はいはい。スポーツドリンクはむし歯のリスクだからやめましょう!って話でしょ?」とここで読むのをやめないで頂きたいです!


そんなに単純な話ではないんです。

実は多くの人が目を逸らしている社会問題ではないか?とすら思っています。


今回は、スポーツをする方や、その保護者の方にも知ってほしい「歯科視点のスポーツドリンクの考え方」についてお話しします。




スポーツドリンクでむし歯になるって本当?



トップアスリートほどむし歯が多いという現実


スポーツをする人ということで、その極端な例としてオリンピック選手などのトップアスリートはどうなのか?をまず見ていきます。


実は、2012年のロンドンオリンピックでは、選手の約55%がむし歯だったという報告があります。(参考文献)


この研究は、歯科の世界、少なくとも私にはかなり衝撃の論文でした。

オリンピックの選手村で同意した選手278名の調査結果です。選手の40%が口の環境に「悩まされている」とも調査結果が出ています。しっかり訓練された歯科医師の診断の結果でもあり、この数字自体は信頼性が高そうです。


また2024年の最新研究でも、同じ傾向が確認されており、トップアスリートほどむし歯になりやすいことが分かっています。(参考文献)

(こちらの論文は査読論文ではありながらも、あまり信頼性の高い論文とは言えないと思いますが、この手の研究はそれほど数があるわけではないので、最新の研究での傾向としてお示しいたしました)


スポーツをする体を鍛えるというのは一見、健康に良さそうに思いますし、それは事実の側面もあると思います。ただ一方で、スポーツをする人のトップであるトップアスリートにも、実は「口の健康」という分かりにくい健康を犠牲にしているのかもしれません。




アスリートがむし歯になりやすい3つの理由


どうしてトップアスリートにむし歯が多いのか?その原因について論文中でも考察が書いてありました。その理由は主に3つです。


① 忙しくて歯科医院に通う時間がない

トレーニングや試合でスケジュールが埋まっており、歯科医院に通う暇がない可能性がありそうです。事実、オリンピックの研究では研究参加者の約半数が前年に歯医者に通院していないという結果が出ています。

口の中の環境に悩まされながらも、”後回し”になっているのかもしれません。「痛くなったら行こう」と思っているうちに、むし歯が進行してしまうことがあります。


② 栄養補給の方法にリスクが潜んでいる

今回のテーマでもある部分ですが、スポーツドリンクやエネルギーゼリー、プロテインバーなど、糖を含む補給食をこまめに摂ることで、口の中に糖が残る時間が長くなります。

これはむし歯が出来やすい環境になってしまう原因になっている可能性は非常に高いです。

糖の摂取「量と頻度」どちらがむし歯のリスクとして重要かという問題は、いまだに科学的決着はついていませんが、スポーツ中のこまめな糖分補給は、「量と頻度」どちらも上昇させてしまうので、歯科医師としては「リスクでしかない」と言わざるを得ません。しかしながら、持久系のスポーツの中には競技中に栄養補給する競技もありますし、トレーニングの効率を上げるためにもこまめな栄養補給が効率的なこともあるでしょう。



③ 運動で唾液が減る

激しい運動や緊張、脱水により、唾液の分泌が減ることがあります。

唾液はリラックスしている時、つまり副交感神経が働いている時、例えば寝てる時や、ゆっくりと食事を楽しんで食べる時に出るようになっています。

逆に、興奮している時は交感神経が働いて、唾液の量は減るようになっています。緊張すると喉がカラカラに乾いたり、口が乾いて話しづらいなんて経験があると思います。野生の動物を想像して頂いて、天敵から逃げたりする状況で唾液がダラダラ出てきたりしたら、困りますよね。

そのように唾液はとても合理的にコントロールされているので、スポーツをしている時は、基本的に唾液の量が減りやすいです。そして唾液は本来、酸を中和して歯を守る役割がありますので、それが減ると防御力が落ちてしまいます。




「やめる」選択肢だけでなく「上手に付き合う」を考える


だからと言って、全てのスポーツ、全ての競技、どんな人でもスポーツドリンクをやめるというのは現実的ではないのは説明するまでもないでしょう。市販のスポーツドリンクが、スポーツ飲料としてパフォーマンスを上げるための最適な食事形態かという議論の派生で、スポーツドリンクは飲む必要はないという結論に至る可能性はありますが、こまめな栄養補給として糖の摂取は必要な場面もあると思います。


現状、スポーツと歯を両立する単純明快明瞭な解決策はないと思います。


ただここで、「歯を諦めて、飲む」もしくは「もう絶対飲まない」と単純化して、考えるのを放棄するのではなく、少し丁寧に考えてみるのはどうでしょうか?

一人で考えるのではなく、専門家である歯科医師や歯科衛生士に相談してもいいです。そうすることで、スポーツと歯どちらも諦める必要はないかもしれません。



今日からできる!むし歯リスクを減らす5つの工夫



1. リスクをどれくらい受け入れるかを考える

まず先に話したように、糖を取るのはそれだけむし歯のリスクを上げてしまうという現実は変わらないので、そもそも何のためにそのスポーツをしているのか?どれくらいむし歯のリスクを許容できるのかを考える必要があって、私はこれが一番大事なのではないかと思います。

例えば、健康維持・健康増進が目的なら、スポーツの成績や結果よりも、むし歯などの健康の方が重要なはずです。その場合、スポーツドリンクは必要ない可能性が高いと思います。学校の部活などでも、多くの学生の場合は健康リスクを上げるのは得策ではないことが多いと思います。

逆にトップアスリートの方や、それを目指す場合はある程度リスクを許容する人も多いかもしれません。

まずはここから考えるのをお勧めします。その上で、この先のリスクをどう下げるかを考えるステップに進むのが大事だと思います。


2. 歯科医院に通院してチェックして相談する

二つ目に「歯科医院に通院する」を持ってくるのは我田引水だと言われかねませんが、

そもそもむし歯のリスクを下げるのは個別性の高いものであり、個々人に合わせたアプローチが必要です。そこで、プロである歯科医師、歯科衛生士にリスクを下げる相談が出来れば、最もあなたやお子さんに合わせた最適なアプローチを一緒に考えることが出来ます。

オリンピック選手を調べた論文でも、歯科医院に通院していないことが、そもそものリスクになっている可能性があり、定期的に歯科医院でチェックしてもらう、あるいは相談するというのは重要なことだと思います。

これ以降は歯科医院で相談して貰えるなら、不要ではあります。私自身、歯医者さんをそのような相談を気軽にしてもらえる場所にしたくて、歯科医院を運営していますが、確かに「相談のしやすさ」はそれぞれ異なるでしょうから、他のリスクを下げるポイントをお伝えします。


3. フッ化物を応用する

いわゆる「フッ素」ですが、これはむし歯予防としてエビデンスが最も高い方法と言えますので、まずはフッ化物の応用を見直しましよう。

基本は夜寝る前を含む一日2回の歯磨きのタイミングでフッ化物歯磨き粉を使うことが重要です。6歳以上は1450ppmという濃度の歯磨き粉を1.5〜2 cm使うことが推奨されています。その上で、歯科医院で塗って貰える高濃度のフッ化物や、洗口剤を組み合わせるなどのハイリスクアプローチは、やはり歯科医院で相談しながら決めるのがいいでしょう。



4. 飲料を飲む目的別に考える

スポーツドリンクと雑にまとめて議論してますが、「何のために、その飲料を飲むのか?」を考えて、目的に合わせて飲料を選択することは、今すぐ出来ることですし、重要なポイントです。

ただの水分補給目的なら、糖が入っている必要はないでしょうし、 栄養補給目的としてでも、本当に飲料で摂取するのが最適なのかも考えると、おにぎりなど腹持ちの良いもので摂取した方が良いかもしれません。 そのように細かく考えると、スポーツドリンクの登場シーンはそもそもそんなに多くならないかもしれません。



5. 糖を摂取するタイミングをまとめる

先の目的を整理した上での話になりますが、糖を摂取するタイミングはまとめても良さそうであれば、出来る限りまとめることで、「頻度」を下げることができるので、それもむし歯リスクを下げることに繋がりそうです。

その他、スポーツドリンクなど飲んだ後は、うがいをするなどの方法もよく聞かれるかもしれません。実践してみても良いかもしれませんが、うがいで洗い流す効果を裏付ける研究はほとんどありません。



まとめ:スポーツも歯も、どちらもあなたの大切な資産です



スポーツドリンクを含む糖の摂取は、スポーツにおいて必要になる場合も確かにあります。

そして、糖の摂取によるむし歯のリスク上昇をキャンセルするような魔法のような方法は存在しません。その中でバランスをどのように取るのかが重要になるという話をさせていただきました。

ただ、その方法は個々人の事情に合わせて、きめ細やかにサポートする必要があり、歯科医師や歯科衛生士などのむし歯のプロと相談できるたら、やはりそれが最も効率的なんじゃないかなぁと思います。

Ihana歯科北浜では、スポーツを頑張る皆さんの口の健康を全力でサポートしています。

気になることがあれば、いつでもご相談くださいね。

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