訪問歯科

Ihana訪問歯科グループの理念

Ihana訪問歯科グループの理念

「食べるを通じて、生きるを豊かに。」

食べること、話すこと、笑うこと。これらは日常の中のささやかな行為ですが、人生の豊かさそのものです。Ihana訪問歯科グループは、歯科医療を「治すため」だけではなく、「日常を守るため」の手段として捉えています。

通院が難しくなったとき、「歯のことは後回し」にされがちです。

しかし、お口の問題を放置すると、食事が取れなくなり、栄養状態が悪化し、全身の健康に影響が及びます。歯が20本未満の高齢者や入れ歯を使用しない方は、食欲低下リスクが2倍以上という報告もあります。食べない理由は「心」ではなく「口」にあるケースが少なくありません。

私たちは、患者さんの「生きる」に寄り添う医療を、歯科医師・歯科衛生士・事務スタッフが職種の垣根を越えたチームで届けます。

訪問歯科は「便利なサービス」ではなく「医療アクセスの保障」です

WHO(世界保健機関)は、口腔保健をユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の一部に位置づけています。

訪問歯科は、加齢・疾病・障害により通院が困難な方に対して、医療へのアクセスそのものを届ける仕組みです。「歯科医院に行けないから歯の治療を諦める」という状況をなくすことが、私たちの使命です。

当院の訪問歯科の特徴

当院の訪問歯科の特徴

「なんとなくの訪問歯科」にしない

訪問歯科の現場では、「とりあえず口腔ケア」「とりあえず義歯調整」で終わってしまうケースが少なくありません。当院は、一人ひとりの患者さんに対して「何を達成すべきか」を明確にし、根拠のある治療計画を立てます。

国際歯科連盟(FDI)が策定したLucerne Care Pathwayの5段階依存度分類を活用し、患者さんの身体状態・生活環境・介護状況を踏まえた治療目標を個別に設定します。

痛みの除去、感染の管理、食べる機能の維持、介護負担の軽減。「この方にとって今最も重要なこと」を多職種で共有しながら進めます。

口腔ケア=肺炎予防の医療的プログラム

英国胸部疾患学会(BTS)の臨床声明では、口腔内の細菌が微小誤嚥を通じて肺炎を引き起こすメカニズムが整理されており、少なくとも1日2回の歯・舌・口蓋の清掃が肺炎予防の実践要件として示されています。

当院の口腔ケアは「お口の清潔」ではなく「肺炎予防の医療的プログラム」として設計しています。具体的な仕様(軟毛ブラシの使用、嚥下障害のある方への非発泡性歯磨剤の選択など)を統一し、施設スタッフ・ご家族にもお伝えします。

「食べる」を支える
—摂食嚥下との連携

食べる機能を支えるために、国際嚥下食標準化構想(IDDSI)のフレームワークを活用し、食形態に関する多職種間の共通言語を整備しています。

歯科治療と嚥下リハビリ・栄養管理を切り離さず、一体的にアプローチします。義歯の調整ひとつでも、「この方が今食べている食形態に合っているか」という視点から設計します。

訪問歯科の対象者

訪問歯科の対象者

訪問歯科は、さまざまな理由で歯科医院への通院が困難な方が対象です。具体的には以下のような方が該当します。

身体的な理由で通院が難しい方
  • 寝たきり、車いす生活で外出が難しい方
  • 脳血管疾患や骨折後のリハビリ中の方
  • 筋力低下やフレイル(虚弱)の状態にある方
認知症等で通院が困難な方
  • 認知症により歯科医院での診療に協力が難しい方
  • 精神・神経疾患で外出自体にサポートが必要な方
施設に入所されている方
  • 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、グループホームなどにお住まいの方
  • NICE(英国国立医療技術評価機構)のガイドラインでは、ケアホーム入所時に口腔ケアニーズを評価し、歯科への紹介体制を設けることが推奨されています。
在宅療養中の方
  • 医療保険で在宅療養を受けておられる方
  • 退院後にリハビリ中で通院が未だ困難な方

FDIの依存度分類では、「中等度依存(通院手段がない・在宅診療を希望)」「高度依存(医学的に移動困難で在宅対応が必須)」が訪問歯科の明確な適応とされています。「うちの家族は対象になるだろうか?」と迷われた場合は、お気軽にお問い合わせください。

訪問対応エリア

当院から半径16km以内のご自宅・施設が訪問対応エリアです(健康保険制度上の規定に準じます)。大阪市中央区の当院を起点に、大阪市内全域、および近隣市町村の広い範囲をカバーしています。

主な対応エリア(目安)

  • 大阪市(中央区・北区・西区・天王寺区・城東区・東成区・阿倍野区など全区)
  • 堺市北部、東大阪市、八尾市、守口市、門真市、大東市 など

エリア外でも状況によりご相談に応じます。まずはお電話ください。

施設への定期訪問もお受けしています

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、グループホームなどへの定期訪問契約にも対応しています。入所者さんの口腔ケア計画の策定から、スタッフへの口腔ケア指導まで一括してお引き受けします。

診療内容

診療内容

ポータブルユニット(持ち運び可能な歯科診療機器)を用いることで、ご自宅や施設でも歯科医院に近い処置が可能です。

むし歯治療

残存歯のむし歯治療、根面う蝕(歯根のむし歯)の処置を行います。高齢者では歯茎が下がり歯根が露出することで根面う蝕が増加するため、早期発見・早期対応が大切です。

歯周病治療

歯石除去、歯周ポケット内の清掃を行います。歯周病菌は誤嚥性肺炎のリスク因子でもあるため、全身の健康管理の一環として重要です。

入れ歯の作製・修理・調整

新しい入れ歯の作製はもちろん、合わなくなった入れ歯の修理・調整も訪問で対応します。FDIの依存度分類に基づき、高度依存の方には修理・調整を優先し、必要最小限の介入で快適さを維持する方針をとります。

口腔ケアプログラム

当院の口腔ケアは、BTS(英国胸部疾患学会)の臨床声明をベースにプログラムを設計しています。

  • 歯・舌・口蓋を軟毛ブラシで清掃(少なくとも1日2回の実施を推奨)
  • 嚥下障害のある方には非発泡性歯磨剤を使用(誤嚥リスクを低減)
  • ピンクのスポンジブラシ(フォームスワブ)は清掃効果が乏しく誤嚥リスクがあるため使用しません。
  • 定期的な口腔内診察で感染・カンジダ・残渣等を早期発見します。

このプログラムを施設スタッフ・ご家族にもお伝えし、日常の口腔ケアの質を底上げします。

摂食嚥下機能への対応

「食べる力」を支えることも訪問歯科の重要な役割です。当院では、嚥下機能に関わる口腔因子(義歯の不適合・口腔乾燥・舌の機能低下など)の評価と改善を行います。必要に応じて、嚥下専門職(言語聴覚士など)への紹介も行います。

食形態については、国際標準であるIDDSI(国際嚥下食標準化構想)のフレームワークを参考に、多職種で情報共有を行います。

抜歯・小外科処置

残根(歯の根だけが残った状態)の抜歯や、膿瘍の切開など緊急性のある処置にも対応します。

フッ化物塗布・予防処置

残存歯のある方には高濃度フッ化物塗布を行い、新たなむし歯の発生を予防します。

治療費用・保険について

治療費用・保険について

健康保険が適用されます

訪問歯科診療は、むし歯治療・歯周病治療・入れ歯の作製や修理・口腔ケアなど、通常の歯科診療と同様に健康保険が適用されます。

介護保険も併用できます

歯科衛生士が行う口腔ケア・口腔機能管理(居宅療養管理指導)は、介護保険の対象です。ケアプランに組み込むことができますので、担当のケアマネジャーにご相談ください。

自己負担の目安

一般的な保険診療の自己負担割合(1〜3割)に加え、訪問診療料が加算されます。具体的な費用は処置内容により異なりますので、事前にお見積もりをお伝えします。

※ 交通費のご負担はありません。

自宅で治療を受けるメリット

自宅で治療を受けるメリット
  1. 移動の負担がありません 通院のための移動・付き添いが不要になります。車いすへの移乗、タクシーの手配、介護者の同行。これらの負担を解消し、患者さんもご家族も安心して治療を受けられます。
  2. 慣れた環境でリラックスして受診できます ご自宅のベッドやソファ、施設のお部屋など、慣れた場所で治療を受けられます。特に認知症の方にとって、環境が変わらないことは安心感につながり、診療への協力が得られやすくなります。
  3. 肺炎予防の口腔ケアを「生活の場」で実装できます 口腔ケアプログラムは、実際にケアが行われる場所で指導・実践することで初めて日常に根付きます。訪問歯科では、施設スタッフやご家族に具体的なケア方法(適切なブラシ・歯磨剤の選択、清掃手順など)を実地でお伝えすることができます。
  4. 生活環境を踏まえた治療計画が立てられます 食事の状況、介護体制、生活動線など、生活の場を直接見ることで、より実情に合った治療・ケア計画をご提案できます。「歯科医院では分からなかった生活上の課題」が見つかることも少なくありません。
  5. 多職種連携がスムーズになります 訪問歯科では、担当のケアマネジャー、訪問看護師、訪問リハビリスタッフ、施設介護職員など、患者さんを支えるチームと直接情報共有ができます。口腔の状態を多職種で把握することで、誤嚥性肺炎予防や栄養管理がより効果的に進みます。

訪問時間

訪問可能な時間帯

火曜〜土曜 午前9:00〜午後5:00

※日曜・祝日の訪問についてはご相談ください。

1回の診療時間

おおむね20〜30分程度です。患者さんの体調や処置内容により前後します。負担のない範囲で行いますので、途中で休憩を挟むことも可能です。

訪問頻度

治療内容に応じて週1〜2回の訪問が基本です。治療完了後は、口腔ケア・メンテナンスのための定期訪問(月1〜2回)に移行します。施設への定期訪問は、施設のスケジュールに合わせて曜日・時間を固定することも可能です。

よくある質問

急に歯が痛くなったり、入れ歯が壊れたりした場合、すぐ来てもらえますか?
できる限り迅速に対応いたします。お電話でご連絡いただければ、当日または翌日の訪問を調整します。痛みの緩和や入れ歯の応急修理は訪問時に対応可能です。
治療の際に、家族が用意しておくべきものはありますか?
基本的な診療器材はすべて持参しますので、特別なご準備は不要です。治療スペースとして、ベッドまたは椅子の周りに1〜2畳程度の空間があれば十分です。お持ちの保険証・介護保険証・お薬手帳をご用意ください。
認知症や寝たきりで、お口を開けるのが難しい場合でも診てもらえますか?
はい、対応いたします。認知症や重度の身体障害をお持ちの方の歯科診療には経験と専門的な配慮が必要です。
FDIの依存度分類では、こうした方は「高度依存」に該当し、予防中心のミニマル介入(最小限の治療で最大の効果を目指す)と介護負担の軽減を重視した治療設計が推奨されています。お一人おひとりの状態に合わせた方法で対応いたします。
継続的な訪問は可能ですか?
もちろん可能です。むしろ、継続的な訪問こそが訪問歯科の本質です。治療後も定期的な口腔ケア・メンテナンスを続けることで、口腔環境の悪化を防ぎ、肺炎予防・栄養状態の維持に貢献します。施設への定期訪問は曜日・時間の固定にも対応いたします。
施設として訪問歯科を導入したいのですが、どのように依頼すればよいですか?
お電話またはお問い合わせフォームからご連絡ください。施設の規模・入所者数・ご希望の訪問頻度などをお伺いし、最適なプランをご提案します。
NICEのガイドラインに基づき、入所時の口腔アセスメントからケア計画の策定、スタッフへの口腔ケア指導、定期的な歯科訪問まで、包括的に対応いたします。
訪問歯科の治療は、歯科医院で受ける治療と比べて質が落ちませんか?
ポータブルユニットやポータブルレントゲンなど、専用の機器を使用することで、歯科医院に近い精度の診療が可能です。
一方で、大がかりな外科処置やインプラントなど、設備上の制約がある処置もあります。その場合は、体調が安定している時期に外来での受診をご提案するなど、柔軟に対応します。
このページの参考文献・エビデンス(全21件)
Ihana訪問歯科グループの理念
WHO WHA74.5 決議 apps.who.int(PDF)
WHO 口腔保健行動計画(2030) cdn.who.int(PDF)
FDI チェアサイドガイド(依存度分類) fdiworlddental.org(PDF)
当院の訪問歯科の特徴
FDI チェアサイドガイド(Lucerne Care Pathway) fdiworlddental.org(PDF)
BTS 誤嚥性肺炎 臨床声明 brit-thoracic.org.uk
Cochrane 口腔ケアと肺炎予防 cochrane.org
IDDSI フレームワーク iddsi.org
ESPEN 高齢者栄養ガイドライン espen.org(PDF)
訪問歯科 SR(2025) pmc.ncbi.nlm.nih.gov
訪問口腔ケア スコーピングレビュー(2024) pmc.ncbi.nlm.nih.gov
訪問歯科の対象者
FDI チェアサイドガイド(依存度5段階分類) fdiworlddental.org(PDF)
NICE NG48(ケアホーム入所者の口腔ケア) nice.org.uk
診療内容
BTS 誤嚥性肺炎 臨床声明(口腔ケア仕様) brit-thoracic.org.uk
Cochrane 口腔ケアと肺炎予防レビュー cochrane.org
IDDSI 食形態フレームワーク iddsi.org
ESPEN 高齢者栄養ガイドライン espen.org(PDF)
摂食嚥下 GRADE推奨ガイドライン pmc.ncbi.nlm.nih.gov
自宅で治療を受けるメリット
訪問歯科のシステマティックレビュー(2025) pmc.ncbi.nlm.nih.gov
訪問口腔ケアのスコーピングレビュー(2024) pmc.ncbi.nlm.nih.gov
よくある質問
FDI チェアサイドガイド(依存度分類・治療目標設計) fdiworlddental.org(PDF)
NICE NG48(ケアホーム入所者の口腔ケア推奨) nice.org.uk