歯医者のフッ素塗布、本当にむし歯を防げるの?体に悪くないの?
「フッ素塗布って、本当に意味があるのかな?」 「子どもに塗って、体に悪くないの?」
お子さんを歯医者さんに連れて行くたびに「フッ素塗りましょうか」とすすめられて、こんな疑問を持ったことはありませんか? よくわからないまま「お願いします」と答えている方、あるいは「よくわからないから、やめておこうかな」と迷っている方もいらっしゃるかもしれません。
こんにちは。Ihana歯科北浜の院長、岩崎です。
この記事では、フッ素塗布の効果や安全性について、国内外の信頼できる研究データ(エビデンス)をもとに、できるだけわかりやすく解説します。おうちでの予防ケアのポイントも具体的にお伝えしますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
この記事で分かること
- 歯科医院でのフッ素塗布は、WHO・USPSTF・ADA が勧める予防法。USPSTF は5歳未満の子ども全員へのフッ素バーニッシュを B 推奨にしている(Davidson 2021)
- 予防効果を示す研究は複数あるが、どれも証拠の確実性は高くない。費用対効果は結論が割れていて、「予防のほうがお得」とは研究からは言い切れない
- 日本の保険で受けられるのはフッ化物歯面塗布処置。フッ素塗布だけに頼らず、年齢に合った量のフッ素入り歯みがき剤(4学会合同の推奨)・だらだら食べを避ける・定期受診を組み合わせる

目次
- 「うちの子は大丈夫」と思っていませんか? :子どものむし歯、実はまだまだ多いんです
- フッ素塗布って何をしているの? :そもそもフッ素がむし歯を防ぐしくみ
- 世界の専門機関はフッ素塗布をどう評価しているの? :「推奨」されている確かな予防法です
- どのくらい効果があるの? :研究が示していること、まだ示していないこと
- お金のことも気になる…… :費用対効果はどうなの?
- 日本の歯医者さんで受けるフッ素塗布は、海外と同じもの? :「バーニッシュ」と「高濃度フッ素塗布」の違いを知っておこう
- 体に悪くないの? フッ素の安全性について
- フッ素塗布だけで安心できる? :「組み合わせ」がカギです
- 今日からできる! おうちでの予防ケア5つのポイント
- まとめ
「うちの子は大丈夫」と思っていませんか? :子どものむし歯、実はまだまだ多いんです
「毎日ちゃんと歯みがきしているから、うちの子はむし歯にならないだろう」と思っている保護者の方は多いかもしれません。でも実は、むし歯は世界で最も多い慢性的な病気のひとつなのです。
アメリカで行われた大規模な全国調査(2011〜2016年)では、2〜5歳の子どものおよそ4〜5人に1人(約23%)が、すでに乳歯にむし歯を経験していることが報告されています(Davidson et al. (2021))。日本でも、3歳児健診でむし歯が見つかるお子さんは決して珍しくありません。
どうして歯みがきだけでは防ぎきれないの?
「ちゃんとみがいているのに、なぜ?」:そう思われるのは当然です。実は、歯みがきだけではむし歯を完全に防ぐのが難しい理由がいくつかあります。
- 乳歯はもともと弱い: 乳歯のエナメル質(歯の表面を覆う硬い層)は、大人の永久歯と比べて薄くてやわらかいという特徴があります。そのため、むし歯菌が出す酸に溶かされやすく、一度むし歯になると進行も速いのです。
- 子どもの歯みがきは不十分になりがち: 小さなお子さんが自分で完璧にみがくのは、手先の発達的にもまだ難しい段階です。仕上げみがきをしていても、奥歯の溝や歯と歯のすき間など、すべての部分をカバーするのは大変です。
- 食生活の影響も大きい: おやつやジュースを「だらだら」と長い時間かけて口にしていると、むし歯菌に栄養を与え続けることになり、むし歯のリスクが上がります。
だからこそ、歯みがきという「基本の予防」に加えて、「プラスアルファ」の予防策が大切になるのです。その代表的な方法が、歯科医院で受けるフッ素塗布です。
フッ素塗布って何をしているの? :そもそもフッ素がむし歯を防ぐしくみ
フッ素塗布の効果をお伝えする前に、「そもそもフッ素って何をしてくれるの?」という疑問にお答えしましょう。
フッ素(正確にはフッ化物)が歯に作用すると、主に次の3つのはたらきでむし歯を防いでくれます。
- 歯を強くする: フッ素が歯の表面のエナメル質に取り込まれると、酸に溶けにくい丈夫な構造(フルオロアパタイト)に変わります。いわば、歯に「鎧(よろい)」を着せるようなイメージです。
- 溶けかけた歯を修復する(再石灰化の促進): 食事のたびに歯の表面はわずかに溶けますが(脱灰=だっかい)、唾液の力で元に戻ります(再石灰化=さいせっかいか)。フッ素はこの「元に戻す力」を強力にサポートしてくれます。
- むし歯菌の活動を抑える: フッ素にはむし歯菌が酸を作り出すのを抑制する効果もあります。
歯科医院でのフッ素塗布は、家庭で使う歯みがき剤よりも高い濃度のフッ素を、歯科医師や歯科衛生士が直接歯に塗る処置です。高濃度のフッ素を歯に作用させることで、上記の効果をより強力に得ることができます。
世界の専門機関はフッ素塗布をどう評価しているの? :「推奨」されている確かな予防法です
「本当に効果があるなら、権威ある機関も推奨しているはず」:そのとおりです。フッ素塗布は、世界の主要な保健・医療機関が公式に推奨しています。
WHO(世界保健機関)の推奨
世界保健機関(WHO)は2019年の実施マニュアルで、子どものむし歯を終わらせるための包括的なアプローチのひとつとして、フッ素の使用を柱に位置づけています。WHOといえば、世界中の人々の健康を守るための指針を出す、国際的に最も権威のある機関です。
USPSTF(米国予防医学専門委員会)の推奨
アメリカの医療政策に大きな影響力を持つUSPSTF(米国予防医学専門委員会)も、5歳未満の子どもに対するフッ素バーニッシュ(フッ素塗布の一種。後ほど詳しく説明します)の使用を推奨しています(Davidson et al., JAMA. 2021;326(21):2172-2178.)。
USPSTFとは、アメリカで「この予防法は科学的に効果が証明されているか?」を厳しく審査する専門家委員会です。ここが「推奨する」と言うのは、それだけ確かな根拠があるということを意味します。
つまり、「なんとなく良さそう」ではありません
フッ素塗布は、歯医者さんが「なんとなく」すすめているわけではなく、世界的に認められた、科学的根拠のある予防法なのです。
どのくらい効果があるの? :研究が示していること、まだ示していないこと
「推奨されているのはわかったけれど、実際どのくらい効果があるの?」と気になりますよね。ここでは、特に信頼性の高い研究結果をご紹介します。
そもそも「メタアナリシス」って何?
これからご紹介する研究は、「メタアナリシス」や「系統的レビュー(システマティックレビュー)」と呼ばれる研究手法で行われたものです。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと:
- 系統的レビュー: ある テーマについて行われた世界中の研究を、偏りなく網羅的に集めて、まとめて評価する方法
- メタアナリシス: 集めた複数の研究のデータを統計的に合算して、より正確な結論を導き出す方法
ひとつの研究だけでは「たまたまそうなっただけかも」という可能性がありますが、何十もの研究をまとめて分析することで、より確かな結論を得ることができます。医学の世界では、最も信頼性の高い研究手法とされています。
研究結果①:24件のランダム化比較試験をまとめた分析
Manchanda ほか(2022) は、6歳未満の子どもを1年以上追跡したランダム化比較試験(参加者をランダムにグループ分けして効果を比較する試験)24件を集め、そのうち専門家が塗る製剤を比べた10件をネットワークメタアナリシス(複数の方法を同時に比較する分析)にかけました。
結果は慎重に読む必要があります。24件のうち17件は「バイアスのリスクが高い」と判定され、対照群と比べて効果が示されたのは、専門家が塗る8種類のうち2種類(3か月ごとの0.9%ジフルオロシラン、6か月ごとの5%フッ化ナトリウムのバーニッシュ)だけでした。家庭で使うフッ素製品については、研究どうしのばらつきが大きく結論が出ていません。著者は証拠の確実性を「非常に低い〜中程度」としています。
研究結果②:33件の試験で予防法をランク付けした分析
He ほか(2023) のネットワークメタアナリシスは、12か月以上追跡したランダム化比較試験33件を対象に、フッ素・クロルヘキシジン・キシリトールなどの予防法を比べてランク付けしました。フッ素バーニッシュは、新しくむし歯ができる子どもの割合を減らしていました(オッズ比 0.63、95%信頼区間 0.48〜0.81)。
ただし著者は、証拠の確実性は低く、研究の数も少ないので、結果の解釈には注意が要ると書いています。
研究結果③:系統的レビュー13件をさらにまとめた「総まとめ研究」
Soares ほか(2021) は、乳幼児のむし歯予防に関する系統的レビュー13件を横断的に評価する「オーバービュー(包括的評価)」を行いました。いわば「まとめのまとめ」です。フッ素バーニッシュと1,000ppmを超えるフッ素入り歯みがき剤は、予防と結びつく方法として挙げられています。
ただ、13件のうち8件は方法の質が「極めて低い」と評価され、著者は「予防法の有効性を支える証拠は、まだ十分とは言えない」と結論しています。
歯科医院でのフッ素塗布には予防効果を示す研究が複数ありますが、どの研究も証拠の確実性は高くありません。紹介した研究はいずれも公表された資料の要約で、当院の成績ではありません。
お金のことも気になる…… :費用対効果はどうなの?
「効果があるのはわかったけれど、何度も通うとお金がかかりすぎるのでは?」という心配もあるかもしれません。実は、この点についても研究で検証されています。
Kumar ほか(2026) は、フッ素バーニッシュの費用対効果を調べた研究23件を集めた系統的レビュー・メタアナリシスです。高所得国の研究を統合した結果、フッ素バーニッシュと他の予防法(口腔衛生指導や通常のケアなど)との間に、費用対効果の有意な差はありませんでした。著者の結論は「高所得国での費用対効果は不確か」です。
Dhyppolito ほか(2023) は、未就学児へのフッ素バーニッシュの経済評価8件を集めた系統的レビューです。費用対効果があるとした研究が4件、費用の増加や費用対効果の低さを示した研究が4件で、著者は「費用対効果があるという説得力のある証拠は見つからなかった」と結論しています。
むし歯になってから治療するとなると、お子さんへの負担(痛みや恐怖心)はもちろん、通院の手間や治療費もかかります。ただ、「予防にお金をかけるほうが、結果的にお得」とまでは、いまの研究データからは言い切れません。費用の面は、お子さんのむし歯のなりやすさと合わせて考えるのが現実的です。
日本の歯医者さんで受けるフッ素塗布は、海外と同じもの? :「バーニッシュ」と「高濃度フッ素塗布」の違いを知っておこう
ここまでご紹介した海外の研究では、「フッ素バーニッシュ」という製剤が多く使われています。ここで、日本の歯科医院で受けるフッ素塗布との違いについて、知っておいていただきたいことがあります。
フッ素バーニッシュとは?
フッ素バーニッシュとは、歯の表面に塗ると固まって膜のようになり、そこから長時間にわたってフッ素をゆっくり放出し続けるタイプの製剤です。塗った後に固まるので、お子さんが唾液で流してしまいにくいという利点があります。国際的には、むし歯予防の標準的な方法として広く使われています。
日本の保険診療で受けられるのは「高濃度フッ素塗布」
しかし、日本ではフッ素バーニッシュはむし歯予防目的での保険適用がありません(知覚過敏=冷たいものがしみる症状の治療としてのみ保険適用)。つまり、むし歯予防としてバーニッシュを受ける場合は自費診療(全額自己負担)になります。
日本の保険診療で行われるフッ素塗布は、「高濃度フッ素塗布(正式名称:フッ化物歯面塗布処置)」です。具体的には、以下のような製剤が使われます。
- 2%フッ化ナトリウム(NaF)溶液やゲル:フッ素濃度は約9,000ppm(ppmは「100万分のいくつ」を表す単位。家庭用歯みがき剤の約6〜10倍の高濃度です)
- APF(リン酸酸性フッ化ナトリウム)製剤
これらを歯科医師や歯科衛生士が、お子さんの歯に直接塗布します。保険の点数としては「フッ化物歯面塗布処置(I031)」として算定され、むし歯になりやすい傾向のあるお子さんなどが対象になります。
「海外と違う方法で大丈夫なの?」という疑問に
海外のエビデンスはバーニッシュを用いた研究が中心ですが、高濃度フッ素塗布もバーニッシュと同様に「高濃度のフッ化物を歯面に直接作用させる」という処置の原理は同じです。日本の歯科医療においても、有効な予防手段として長年にわたって広く実施されてきた実績があります。
費用面でのメリットもあります。保険適用の高濃度フッ素塗布は、お子さんの場合は医療費の自己負担が少なく済むため(乳幼児医療費助成制度の対象にもなることが多い)、気軽に、そして定期的に受けやすいという大きな利点があります。
体に悪くないの? フッ素の安全性について
フッ素塗布を検討するうえで、多くの保護者が最も気になるのが安全性ではないでしょうか。「フッ素って体に悪くないの?」「歯に白い斑点ができるって聞いたけど……」という心配の声をよく耳にします。
「歯のフッ素症」とは?
「フッ素症(歯のフッ素症)」とは、歯が作られている時期(おもに乳幼児期)に過剰なフッ素を長期間にわたって摂取し続けた場合に、永久歯の表面に白い斑点や線が現れることがある状態です。
Wong et al. (2024) のコクランレビュー(医療の分野で最も信頼されている系統的レビューのひとつ)の2024年更新版では、局所フッ素製剤(歯に直接塗るタイプのフッ素製品)と歯のフッ素症との関係が詳しく調べられています。
このレビューでは、主にフッ素入り歯みがき剤の使用開始時期や使用量との関連が検討されています。
歯科医院でのフッ素塗布は安全?
結論から言うと、歯科医院で行うフッ素塗布は、使用量を歯科専門家が管理して行う処置です。
歯科医院では、お子さんの年齢や体重に合わせた適切な量のフッ素を使用し、余分なフッ素はきちんと除去します。「フッ素を飲み込んでしまったらどうしよう」と心配される方もいますが、塗布に使う量はごくわずかです。
おうちでの歯みがき剤の量には注意が必要です
ただし、注意が必要なのは家庭でのフッ素入り歯みがき剤の使い方です。特に小さなお子さんは歯みがき剤を飲み込みやすいので、年齢に合った量を守ることが大切です(具体的な量は、この後の「おうちでできる予防のポイント」で詳しくご説明します)。
フッ素塗布だけで安心できる? :「組み合わせ」がカギです
ここまでフッ素塗布の効果をお伝えしてきましたが、ひとつ大切なことがあります。それは、フッ素塗布だけに頼るのでは不十分ということです。
研究が示す「選択肢の広さ」
Inchingolo ほか(2023) の系統的レビューは、直近5年のランダム化比較試験から、フッ化ナトリウムのバーニッシュ、フッ化ジアンミン銀(SDF)、削らずに詰める処置(ART)といった複数の選択肢を比べ、いずれも乳幼児のむし歯の進行を止める方法として有効だったと報告しています。
たとえるなら、フッ素塗布は「強力な味方」ではありますが、それだけで戦うよりも、仲間(他の予防法)と一緒に戦うほうが、ずっと強いのです。
他にはどんな予防法があるの?
ADA(米国歯科医師会)の2018年ガイドライン(Slayton et al., 2018)では、フッ素バーニッシュに加えて、むし歯の状態に応じたさまざまな選択肢が示されています。
| 予防法 | どういうもの? | どんなときに使う? |
| フッ素塗布 | 高濃度のフッ素を歯に塗る | 定期健診のときに(3〜6か月ごと) |
| シーラント | 奥歯の溝を歯科用の樹脂(プラスチックのような材料)で埋めて、むし歯菌が入り込むのを防ぐ | 奥歯が生えてきたとき、溝が深いとき |
| フッ化ジアンミン銀(SDF) | 銀とフッ素を含む液体を塗って、むし歯の進行を止める | むし歯が見つかったけれど、すぐに削る治療が難しいとき |
お子さんのお口の状態やむし歯のリスクに合わせて、歯科医師と相談しながら最適な組み合わせを選ぶことが大切です。
今日からできる! おうちでの予防ケア5つのポイント
歯科医院でのフッ素塗布と合わせて、毎日のおうちでのケアがとても重要です。以下の5つのポイントを、ぜひ今日から実践してみてください。
ポイント① フッ素入り歯みがき剤を「正しい量」で使いましょう
2023年に、日本小児歯科学会・日本口腔衛生学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会の4つの学会が合同で「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」を発表しました。これは、最新の研究成果をふまえて、従来よりも推奨されるフッ素濃度が引き上げられた、日本における最も信頼できる指針です。
具体的な推奨は以下のとおりです。
| 年齢 | フッ素の濃度 | 歯みがき剤の量の目安 | イメージ |
| 歯が生え始め〜2歳 | 900〜1,000ppmF | 米粒くらい(1〜2mm) | ほんの少しでOK |
| 3〜5歳 | 900〜1,000ppmF | グリーンピースくらい(5mm) | 小さな粒ひとつ分 |
| 6歳〜大人・高齢者 | 1,500ppmF | 歯ブラシ全体(1.5〜2cm) | しっかり載せてOK |
💡 ワンポイント: お店で歯みがき剤を選ぶとき、パッケージに「フッ素○○ppm」と書いてあるのを確認してみてください。お子さんの年齢に合った濃度のものを選びましょう。
ポイント② 歯みがきは「1日2回」、うがいは「少なめ」に
就寝前を含めて1日2回の歯みがきが推奨されています。
そして意外と知られていないのが、歯みがき後のうがいは少量の水で1回程度にとどめるということ。何度もブクブクうがいをしてしまうと、せっかくのフッ素がお口の中から流れ出てしまいます。少しのお水で軽くゆすぐだけにすることで、フッ素がお口の中に長くとどまり、より効果を発揮してくれます。
ポイント③ 小さなお子さんには「仕上げみがき」を忘れずに
小さなお子さんが自分だけで歯をすみずみまでみがくのは難しいものです。必ず大人が仕上げみがきをしてあげてください。 特に、上の前歯の裏側や奥歯のかみ合わせの面は、みがき残しが多い場所です。
お子さんを仰向けに寝かせて(膝の上に頭を載せるなど)、お口の中がよく見える状態でみがいてあげると効果的です。
ポイント④ 甘い飲み物・おやつの「だらだら食べ」を避けましょう
むし歯菌は、糖分をエサにして酸を作り出します。おやつやジュースを1日に何度も、あるいは長い時間かけて口にしていると、お口の中がずっと酸性の状態=歯が溶けやすい状態が続いてしまいます。
具体的にはこうしましょう:
- おやつの時間と回数を決める(「3時のおやつ」など)
- だらだらと食べ続けない(テレビを見ながら延々とお菓子をつまむのはNG)
- 食べたら歯みがき、難しければお水やお茶でお口をゆすぐ
- 寝る前のジュースや甘い飲み物は特に避ける
ポイント⑤ 定期的に歯科医院を受診しましょう
フッ素塗布は、3〜6か月ごとに受けるのが一般的な目安です。ただし、お子さん一人ひとりのむし歯リスク(むし歯になりやすさ)は異なりますので、かかりつけの歯科医師と相談して、最適な頻度を決めましょう。
また、定期受診には他にもメリットがあります。
- むし歯を早期に発見できる(早く見つかれば、軽い処置で済むことが多い)
- お子さんの歯並びや成長の状態を継続的にチェックできる
- お子さんが歯医者さんに慣れることで、いざ治療が必要になったときにスムーズに受けられる
- 奥歯の溝が深い場合は、シーラント(溝を樹脂で埋めてむし歯を防ぐ処置)の適応があるか相談できる
まとめ
この記事の要点
- 歯科医院でのフッ素塗布は、WHO・USPSTF・ADA が勧める予防法です。USPSTF は5歳未満の子ども全員へのフッ素バーニッシュを B 推奨にしています(Davidson 2021)
- 予防効果を示す研究は複数ありますが、どれも証拠の確実性は高くありません。費用対効果は結論が割れていて、「予防のほうがお得」とは研究からは言い切れません
- 日本の保険で受けられるのはフッ化物歯面塗布処置です。フッ素塗布だけに頼らず、年齢に合った量のフッ素入り歯みがき剤(4学会合同の推奨)・だらだら食べを避ける・定期受診を組み合わせます
大阪市中央区にあるIhana歯科北浜では、お子さま一人ひとりのお口の状態やむし歯のなりやすさを伺ったうえで、フッ素塗布を含む予防の組み合わせをご説明しています。「いつから始めればいいの?」「うちの子に合った予防法は?」と気になる方は、LINE または Web 予約からご相談ください。
※紹介した研究や推奨の記述は公表された資料の要約で、当院の成績ではありません。
※保険でのフッ化物歯面塗布処置の対象や自己負担は、お子さまの状態と自治体の助成制度によって変わります。
執筆:岩崎亮也(歯科医師・Ihana歯科北浜 院長)/初出 2026-04-15・更新 2026-10-08(引用した研究7本の要旨を PubMed で照合し、結論が反対だった費用対効果の2本と強すぎた3本を要旨に合わせて書き直し、参考文献の巻・号・頁も一次資料で確かめました)
この記事の参考文献・一次資料(全11件)
- 1. 子どものむし歯は多い/3. 世界の専門機関の評価
- US Preventive Services Task Force; Davidson KW ほか 2021. JAMA 326(21):2172-2178. 米国予防医学専門委員会の推奨声明(5歳未満の全員へのフッ素バーニッシュ=B 推奨。2〜5歳の約23%がむし歯経験=NHANES 2011〜2016 の引用) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- World Health Organization. Ending childhood dental caries: WHO implementation manual. 2019(公開ページ。本文の逐語は 2026-10-08 時点で PDF を取得できず未照合) who.int
- 4. どのくらい効果があるの?
- Manchanda S ほか 2022. J Dent 116:103885. 6歳未満・1年以上追跡の RCT 24件の系統的レビュー+ネットワークメタ解析(17件が高リスク。効果が示されたのは専門家塗布の2種のみ・確実性は非常に低い〜中) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- He S ほか 2023. Int J Paediatr Dent 33(5):507-520. 12か月以上追跡の RCT 33件のネットワークメタ解析(フッ素バーニッシュのう蝕発生 OR 0.63、95%CI 0.48〜0.81・確実性は低い) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Soares RC ほか 2021. Int J Paediatr Dent 31(3):394-421. 乳幼児う蝕予防の系統的レビュー13件のオーバービュー(8件が AMSTAR 2 で極めて低い。著者は証拠はまだ十分でないと結論) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- 5. 費用対効果はどうなの?
- Kumar RS ほか 2026. J Dent 167:106562. フッ素バーニッシュの費用対効果研究23件の系統的レビュー+メタ解析(他の予防法との INMB に有意差なし。高所得国での費用対効果は不確かと結論) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Dhyppolito IM ほか 2023. Int J Paediatr Dent 33(5):431-449. 未就学児へのフッ素バーニッシュの経済評価8件の系統的レビュー(費用対効果あり4件・なし4件。説得力のある証拠は無いと結論) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- 7. フッ素の安全性
- Wong MCM ほか 2024. Cochrane Database Syst Rev 6:CD007693(2024年更新版). 局所フッ化物と歯のフッ素症の関係=43研究(RCT 3・コホート4・症例対照10・横断26)の系統的レビュー pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- 8. フッ素塗布だけで安心できる?
- Inchingolo AM ほか 2023. Eur Rev Med Pharmacol Sci 27(22):11082-11092. 直近5年の RCT の系統的レビュー(NaF バーニッシュ・ART・SDF・ナノ銀フッ化物・SMART を比較) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Slayton RL ほか(米国歯科医師会)2018. J Am Dent Assoc 149(10):837-849.e19. 非修復的治療(削らない治療)の診療ガイドライン(フッ素バーニッシュ・シーラント・SDF などの選択肢) doi.org
- 9. おうちでの予防ケア
- 日本小児歯科学会・日本口腔衛生学会・日本歯科保存学会・日本老年歯科医学会「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」2023(年齢別の濃度と量の表は 2026-10-08 に照合) jspd.or.jp
