医療広告ガイドラインのNG表現、その投稿うっかりアウトでは?
2025/06/26執筆
こんにちは。Ihana歯科北浜院長の岩﨑です。
SNSやWebサイトが欠かせない時代…
驚くほどの”うっかりアウト”が溢れていることをご存知でしょうか?
今回は、院内で最近行った勉強会
題して
「医療広告ガイドラインを笑って学ぶ会」
で得た学びをブログでシェアしたいと思います。
簡単な内容はYoutubeにもラジオ形式としてアップロードしたので、まずはそちらから聞いてもらうと、分かりやすいと思います。
是非まずは、お聞きください!
この記事で分かること
- 「最先端」「最高の医療」「必ず成功」のような表現は、虚偽・誇大・比較優良として禁止される。「ガイドライン遵守」を大きく掲げるのも、事例解説書が誇大広告の例に挙げている
- 医療広告かどうかは「誘引性」と「特定性」で決まる。スタッフの個人ブログでも、受診を誘う意図があり医院が特定できれば広告になる
- 自院のウェブサイトなど患者が自分で求めて見る媒体では「限定解除」で広告できる事項の限定が外れる。条件は、問い合わせ先・自由診療の内容と費用・主なリスクと副作用を同じページに載せること
2026年10月の更新について
この記事は2025年6月に、当時の「医療広告ガイドライン」をもとに書きました。その後、令和8年3月30日の改正で名称が「医療広告等ガイドライン」に変わっています。ガイドライン本体に版数はなく最終改正日で管理され、版数が付くのは別冊の「事例解説書」のほうです(現行は第5版・令和7年3月)。本文中の「医療広告ガイドライン」は執筆時の呼び方のままにし、リンク先は現行の資料に差し替えました。
目次
なぜ「広告ガイドラインの勉強会」なのか?
開業に伴い、InstagramやYoutubeなどのSNSで情報発信していこうか~と院内でなったので、改めて「医療広告ガイドライン」を勉強することにしました。
そこで、スタッフ全員で”笑いながら”学ぶ会を企画しました。
ええ~!嘘!?これもアウトなん!?
めっちゃ見る広告やん!
SNS広告に見慣れていると意外性の連続と、実際の事例のあれやこれやと盛り上がりながら学ぶことが出来ました。
そして、医療広告は一般の広告とは全くの別ルールであることを再認識することが出来ました。

まずはクイズでウォーミングアップ
勉強会の導入に使った3つの例をそのまま出題します。
みなさんもOKかNGか、心のなかで答えてみてください。
問題1️⃣
「即日インプラント治療!1日ですべての治療が終了します!」
この表現はOKでしょうかNGでしょうか?
答え:NG
定期メンテナンスが不可欠なのに、完結をうたう虚偽広告になります。虚偽は駄目ですよね。
問題2️⃣
「当院は最高の医療を地域の皆様に提供しております」
この表現はOKでしょうか?NGでしょうか?
答え:NG
「最高の」は最上級表現で、比較優良広告に該当します。比較しちゃいけないんですね。
問題3️⃣
「〇〇クリニックでは、最先端の治療を提供しています」
この表現はOKでしょうか?NGでしょうか?
答え:NG
「最先端」「最適」などは誇大広告。おおげさな表現となってしまうということですね。
どうでしょうか?驚かれましたか?
”最先端”などの表現は医療広告でもよく見る表現のように感じるので、驚きがあったのではないでしょうか?
「守っていることを大きく宣言」も実はNG
「ルール守るの大変なんで、”せめて”、『医療広告ガイドライン遵守!』は大きくホームページなんかで記載しましょうよ」
そんな声もありましたが、これもNGです。厚生労働省の事例解説書(第5版)は、「医療広告ガイドラインを遵守していることは、特段、強調すべきことではないと考えられるため、文字の大きさ・色等によって強調するような表現は認められない」として、誇大広告の例に挙げています。行政機関が保証しているように誤認させる書き方も同じ扱いです。”守るべき姿勢そのものを広告材料にしてはいけない”という考え方です。
NGになりやすいものリスト8
このあたりで、NGになりやすい広告の種類の全体をみてみましょう。
| 虚偽広告 | 医学上あり得ない「絶対安全」や「必ず成功」といった虚偽の表現、根拠のないデータ(「99%の満足度」)、加工・修正された術前術後写真、実態のない研究機関の併設など、事実に反する内容です |
| 比較優良広告 | 他の医療機関と比べて自院が優れていると誤認させる「日本一」「No.1」「最高」などの最上級の表現や、特定・不特定の他院との比較、著名人との関連性を強調する広告です |
| 誇大広告 | 虚偽ではないものの、事実を不当に誇張し、患者に誤解や過度な期待を抱かせる表現です。具体例として、法令上の根拠のない「○○センター」の名称使用、治療回数や期間を誤認させる表現(「し放題」)、費用を過度に強調するキャンペーンや割引、医療と無関係な物品の贈呈による誘引などが含まれます |
| 公序良俗に反する内容の広告 | わいせつまたは残虐な図画や映像、差別を助長する表現など、公共の秩序や善良な風俗に反する内容です |
| 広告可能事項以外の広告 | 法令や告示で広告可能とされた事項以外は原則禁止です。例として、「専門外来」という名称(特定の治療や検査に関する広告は可能)、死亡率や術後生存率などの治療結果、未承認医薬品による治療内容などが挙げられます。 |
| 患者の体験談 | 患者やその家族による主観的な治療内容や効果に関する体験談は、誤認を招くおそれがあるため禁止されます。口コミサイトからの転載やスタッフによる記載も含まれます |
| 誤認させるおそれがある ビフォー・アフター写真 |
治療内容や効果について患者を誤認させるおそれがある術前術後の写真(ビフォー・アフター写真)は禁止されます。写真に十分な説明(治療内容、費用、リスク・副作用)が伴わない場合や、説明が分かりにくい形式(リンク先や極小文字)の場合は認められません |
| その他 | •品位を損ねる広告: 医療機関や医療内容の品位を損ねる、またはそのおそれがある広告です。具体的には、費用を過度に強調するキャンペーンや割引、無料モニター、医療と直接関係ない物品の贈呈による誘引(例:「無料相談で〇〇をプレゼント」)、ふざけた表現やドタバタ的な表現 が禁止されます。•他法令に違反する広告: 医療広告は他法令(景品表示法、医薬品医療機器等法、健康増進法、不正競争防止法など)の規制も受けるため、これらの法令に抵触する内容は禁止されます。例えば、医薬品の販売名を広告すること や、実際よりも著しく優良・有利と誤認させる不当表示 などが含まれます。 |
そもそも”医療広告”とは何か?
医療広告ガイドラインでは、次の2条件がそろうと広告と判定します(ガイドラインの定義ではこれに「医業・歯科医業や医療機関に関する内容であること」を加えた3つですが、歯科の情報発信では3つ目は自然に満たすので、実務では次の2つで考えます)。
- 誘引性 : 患者を受診へ誘う意図がある
- 特定性 : 医療機関や医師を特定出来る情報が含まれる
時々「スタッフの個人ブログだから、医療広告に当たらない」という話も聞きますが、そのブログが患者を受診させる意図があって、そのスタッフが勤める医院が特定出来る場合は”医療広告”と判断されると言うことですね。
ただ、院内で(既に受診中の)患者さんに渡すパンフレットなどは、通常この条件を満たさないため広告扱いとならないでしょう。
この線引きを理解しておくと実務で混乱しにくくなります。
”限定解除”という考え方
ここまで読んで頂いて、医療広告では「あれも駄目、これも駄目」と規定されていて、「自由じゃない」と感じて頂けると思いますが、それもそのはず、
そもそも医療広告は、原則「広告できる事項が決まっている」世界なのです。
ただ、それだと、患者さんが医療機関の情報を深堀りして調べたい時にあまりにも不便すぎます。なのでそれを可能にする仕組みが、限定解除です。
要件は次の4つです。
- 患者が自分で求めてアクセスする媒体であること(例:自院のウェブサイト、メルマガ、求めに応じて送るパンフレット。バナー広告や検索結果のスポンサー枠は該当しません)
- 問い合わせ先の明示(電話番号・Eメールアドレス等)
- 自由診療の内容・費用等を”通常必要な範囲”で掲載(自由診療である旨、通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間と回数)
- 主なリスクや副作用の明示
3と4は自由診療の情報を載せる場合の要件です。費用やリスクをリンク先に逃がしたり、利点に比べて極端に小さな文字で書いたりする形式は認められません。承認されていない医薬品・医療機器(承認された効能・効果や用法・用量と異なる使い方を含む)を自由診療で使う場合は、〔未承認である旨/入手経路等/国内の承認医薬品等の有無/諸外国における安全性等の情報〕の4つも書く必要があります。
要するに、「メリットばかり並べず、問い合わせ口も示し、リスクや費用を一緒に提示する」
もっと言えば優良誤認させないように気をつけることが鍵になると思います。
結局、何を心がければ良いのか?
医療広告は自由競争のツールではなく、患者さんが適切で安全な医療を選ぶための羅針盤。
この精神を忘れなければ、大きく道を踏み外すことはないだろうと思いました。
- 嘘をつかない
- 誤解をさせない
- 比較しない/煽らない
- リスクや費用をセットで伝える
「医療広告ガイドライン」について思うこと
さて、ここまでは、患者さん・一般の方を守るためのルールとして、「医療広告ガイドライン」の重要性を見てきました。ただ一方で、「医療広告ガイドライン」の問題点についても思うことがあります。
一つは、ガイドラインはあるものの、かなり野放し、「ルール破ったもん勝ち」の世界になっている側面がある。みなさんも、おそらくかなりの量の医療広告ガイドライン違反の広告を目にされていると思います。ルールはあるけど、あまりにも違反の量が多くて野放しになっている。そうすると、優良誤認で医療機関を受診されるケースもどうしても増えてしまうでしょう。
もう一つは、私はこちらの方が、より深刻な問題だと思いますが、真面目な先生や真面目な医療機関であるほど、重要な医療情報を提供するのに萎縮してしまうという問題です。医療広告は、先程お伝えした通り、2つの条件を満たすと広告とみなされますので、基本的に発信媒体は問いません。書籍、新聞、TVメディアどこの露出しようとも、基本的に本名で歯科情報を発信するとなると、基本的に特定性は満たしてしまうので、残りは誘引性だけということになり、かなり厳しい条件となります。萎縮してしまうのも当然のことかと思われます。
実際、私自身もSNSやブログでの発信を行う中で、「これは誘引性があるとみなされるのではないか」「ガイドラインに抵触してしまうのではないか」と不安になりながら発信してます。結果として、患者さんに本当に知っておいてほしい情報であっても、「やめておこうかな」とブレーキを踏みたくなる気持ちが大きいです。
でも、ここで立ち止まって考えてみるべきだと思うのです。本当に守るべきなのは、誰なのか。そして、何を守るためのガイドラインなのか。
医療広告ガイドラインの本来の目的は、「優良誤認から患者さんを守る」ことです。逆に言えば、根拠をもとにした正確な情報を提供し、患者さんの自己判断を助けるような内容は、本来もっと推奨されるべきはずです。
「信頼される医療情報発信」のために
今後もガイドラインの範囲を正確に理解しつつ、必要以上に萎縮することなく、地域の方々にとって有益な情報を届けていきたいと考えています。
もちろん、違反にならないような表現や伝え方を工夫する必要はあります。でも、「間違った情報が広まり、正しい情報が埋もれてしまう」という現状を変えていくには、やはり、私たち医療人が正しい情報を発信し続けることが必要だと考えています。
どうか、温かい目で見守っていただき、時には厳しいご意見も含めて、応援していただけましたら幸いです。
もっと学びたい方へ(参考文献)
すごくすごくおすすめなのは、こちら↓↓
医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版・令和7年3月)
図解で事例紹介してあるので、とてもとても分かりやすいです!
まずはこれをパラパラ見てみるのが良いのではないでしょうか。
個別の事例を知ると、次に知りたくなるのが、全体像ですよね。
「事例はわかったけど、それぞれホントはどういうルールなの??」
って感じる方は、こちらを知りたいところだけでも読むと良いのではないかと思います。
例えば、口コミの掲載は禁止されていると書きましたが、実際には「患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告をしてはならないこと」となっており、”治療等の内容又は効果に関する体験談”でなければ?など面白い気付きもあるかもしれません。
↓↓↓
『医療広告等ガイドライン』(令和8年3月30日最終改正)
口コミの線引き(ガイドラインの本文から)
患者さんが自分の意思で口コミサイトやSNSに書いたものは、医院が掲載を依頼したり謝礼を渡したりしていなければ誘引性がなく、広告には当たりません。一方、その口コミを医院のウェブサイトやSNSに転載すれば医院の広告になり、治療の内容や効果に触れていれば体験談広告として禁止されます。依頼して書いてもらったり、書く内容を指定したりすると、患者さんの投稿が医院の表示として扱われます。
まとめ
この記事の要点
- 「最先端」「最高の医療」「必ず成功」のような表現は、虚偽・誇大・比較優良として禁止されます。「ガイドライン遵守」を大きく掲げるのも、事例解説書が誇大広告の例に挙げています
- 医療広告かどうかは「誘引性」と「特定性」で決まります。スタッフの個人ブログでも、受診を誘う意図があり医院が特定できれば広告になります
- 自院のウェブサイトなど患者が自分で求めて見る媒体では「限定解除」で広告できる事項の限定が外れます。条件は、問い合わせ先・自由診療の内容と費用・主なリスクと副作用を同じページに載せることです
私たち医療者にとって、広告規制は「守るべき義務」ですが、一方で一般の方に分かりやすく正確な情報を届ける責務もあると思います。ルールと向き合いながら、スタッフ全員でより良い情報発信を探求していきますので、何かお気づきの点があればどうぞ遠慮なくお知らせください。
※この記事の一次資料は、厚生労働省の医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)と事例解説書(第5版・令和7年3月)です。クイズの例文は勉強会の教材で、特定の医療機関を指したものではありません。
※個別の表現が広告規制に当たるかどうかは、所管の保健所や都道府県の窓口にご確認ください。
執筆:岩崎亮也(歯科医師・Ihana歯科北浜 院長)/初出 2025-06-27・更新 2026-10-08(令和8年3月30日の改正と名称変更、事例解説書の版と切れていたリンク、限定解除の要件の中身を厚生労働省の一次資料で確かめて直しました)
この記事の参考文献・一次資料(全2件)
- 「守っていることを大きく宣言」も実はNG/NGになりやすいものリスト8
- 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版)」令和7年3月(p6 (1) 治療内容・期間の虚偽/p9 (4) ガイドラインを遵守している旨の広告/p15 (9) 最適・最先端) mhlw.go.jp(PDF)
- そもそも”医療広告”とは何か?/”限定解除”という考え方/口コミの線引き
- 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」令和8年3月30日最終改正(第2の1-1 定義/第2の5 広告に該当しないもの/第3-1 禁止される広告/第3-3 限定解除の要件) mhlw.go.jp(PDF)
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